高齢なメス犬の避妊手術。手術をする上で気をつけたい5つのこと。

明確な区切りは特にありませんが、何歳から高齢犬なのかと言えば、小型犬であれば10歳、中型、大型であれば8歳、超大型犬であれば6歳ぐらいで高齢のくくりになると思います。

私の経験上、高齢になってから避妊手術を行おうと検討している時は、避妊手術だけでなく、例えば乳腺腫瘍を一緒に摘出するとか、歯石除去を行いたいとか、そういったほかの目的と合わせて行う場合が多いと思います。

今回は、避妊手術を純粋に行う際の注意点をお伝えしようと思いますので、他の手術と一緒の場合に行う際に注意すべき点とは、必ずしも一緒ではありません。

ただ、おおよそは同じような点を注意していただきたいと思っていますので、ご参考にしていただければと思います。

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一般的な食欲や元気はあるのか?

ここは大前提の条件です。

特に術後の体力の消耗は、若い個体のそれに比べ非常に大きなものになります。

手術がうまくいったとしても、基礎体力がなければ、術後も速やかに体力が回復しません。

場合によっては思いもよらない事態を招く可能性もあります。

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体型は適切であるか?

痩せているもしくは肥満であるかは、手術をする上で非常に大きな要因となります。

一般的に、痩せ気味の動物は皮下脂肪が少ないため、術後に自力で体温を保つことがほぼできません。

体温の低下は、血圧の低下、血流の低下などを引き起こし、麻酔の覚醒がうまくいかない場合や、不整脈を引き起こす可能性もあります。

反対に、肥満の動物は、麻酔のリスクも高くなるだけでなく、避妊手術自体が困難になることもあります。

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いずれにしても適正な体型ではなかった場合、手術のリスクは上がると考えたほうが妥当です。

麻酔の代謝にかかわる腎臓や肝臓といった臓器の機能は問題ないか?

体の中に入ってくる大部分のものは、尿もしくは便として体外に出ていきます。

これは食べ物だけの話ではなく、麻酔薬を含む体内に入ってきた物質すべてにおいて言えることです。

体の中の不純物は分解され、最終的には腎臓を通して尿として排泄されるか、肝臓(と胆嚢)を通して便として排泄されます。

したがって、腎臓と肝臓の機能は、麻酔を体外に排泄させる機能そのものですから、麻酔のリスクに大きく関わってきます。

腎臓と肝臓の検査は、血液検査として必要最低限行うべき検査だと思います。

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心肺の機能は問題ないか?

麻酔薬は、呼吸器系と循環器系にも作用し、肺や心臓の機能を低下させます。

たいていの場合は、肺の機能は、麻酔器によって調整されるため、あまり心配をしなくてもよいことがほとんどです。

一方、心臓の場合は、麻酔中であっても、動物自身の自律能力に依存するので、過度に投与された麻酔薬によって、心拍の低下もしくは心停止を招き、最悪の状態になるケースもあります。

健康な個体でも、加齢による心臓機能の低下が存在しただけで、適切な麻酔の量なのにも関わらず、心臓の機能が著しく低下し、思わぬ事態を引き起こすリスクがあります。

したがって、心肺機能に年齢の要因以外の問題がないのかどうか精査する必要があるでしょう。

内分泌(ホルモン)の異常はないか?

若い個体では滅多にないのですが、高齢になるとホルモンの分泌量が異常になっていることがあります。

犬種によって差はあるのですが、高齢犬に多く発生するのが甲状腺機能低下症と呼ばれるホルモン異常です。

また、未避妊の高齢犬に多いホルモン異常としてクッシング症候群と呼ばれるも増えてきます。

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これらのホルモン異常は、原因はわかっていないのですが、麻酔覚醒後に不整脈を誘発することが知れられおり、術後の突然死を引き起こす要因となります。

これらの疾患は血液検査にて事前に把握できるので、術前検査として検討していただいた方がいいと思います。

まとめ

高齢になってから子宮と卵巣を摘出したからといって、若い個体に比べてデメリットが出やすくなることはありません。

ですが、当然ながら摘出する行為自体は、若い個体よりもリスクは高く成ります。

手術をするリスクとしないリスクを冷静に見極めることが、高齢犬の避妊手術の重要な点であり、獣医師の責任に多くかかってくるところでもあると思います。