縫合糸のアレルギー?肉芽腫??犬の避妊手術後の縫合糸にまつわるあれこれ。

避妊手術を受けようとする際に心配になることって色々あると思います。

麻酔のこと

入院のこと

もちろん手術のこと

数えあげたらきりがないのかもしれませんが、その中で、意外と重要で、でも事前に飼い主様が知らないことの代表格として、手術で使う糸「縫合糸」の問題があります

手術の傷自体にについては下の記事を参考にしてください。

退院後に気になる!?犬の避妊手術の傷口の疑問。
待ちに待った避妊手術のお迎え。 楽しみにしていたのは飼い主だけではありません。 愛犬もきっと飼い主の顔を一目見ると、嬉しさのあま...

今回は手術の傷ではなく、縫合糸そのものについてご説明したいと思います。

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縫合糸の種類

縫合糸は大きく分けて、吸収糸(溶ける糸)と非吸収糸(溶けない糸)の2種類があります。

その名の通り吸収糸は、最終的に溶けて体内に残らないという利点がありますが、縫合した部分が取れやすく、糸としての強度はそれほど強くありません。

非吸収糸は、溶けない分、強靭な結紮が可能ですが、体に異物反応を起こしやすいと言われています。

また、吸収糸も非吸収糸にも、糸の繊維が単一であるものと、非常に細い糸を編み込んで1本の糸にしてあるものの2種類があります。

繊維が織り込んである糸の場合は、糸自体はしなやかで縫合しやすい反面、織り込まれている凹凸の中に細菌が感染しやすいという欠点があります。

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その反面、単一の繊維でできている糸は表面が滑らかで、雑菌の混入がしにくい分、縫合した部分の強度が幾分落ちます。

縫合糸の使い分け

基本的な用途としては、皮膚など抜糸が後日に可能なところは非吸収糸を使用し、縫合糸を体内の中に残すような場合は吸収糸を使用します。

あくまでも術者の好みにもよりますが、ち密な縫合が必要な場合は、織り込みがしてある糸を使用することが多いと思います。

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縫合糸による不具合

手術に必要な縫合糸とは言えども、体にとっては異物になるため、場合によっては困った反応を引き起こすことがあります。

  • 反応性肉芽腫 血管を結紮するとか腸や胃の粘膜を縫合した時に使用した縫合糸が、後日免疫反応を引き起こし、体内にしこりを発生させる反応です。結構大きくなることもあり、腫瘍と見間違えることもあります。避妊手術では卵巣側の血管を結紮した際に使用する縫合糸によってできることがあります。これがもとで大事に至った経験はありませんが、あまり気持ちのいいものではありません。
  • 無菌性結節性脂肪織炎 難しい名前ですが、縫合糸に反応してぐちゅぐちゅした皮膚病変を作ります。名前の通り細菌感染を伴っていないので、特に本人はいたって元気なのですが、分泌物が結構多く、シーツや布団を汚してしまうので、飼い主様には困った問題となります。避妊手術では、腹筋を縫合した糸に反応して出てくるケースが多いと思います。
  • 膿瘍 縫合した部分に感染を起すことで発生します。場所によっては大事に至るケースもありますので、早めの対応が必要となります。

これらの不具合への対応は、基本的には問題となっている縫合糸を体外にとり出すしかありません

ただし、反応性肉芽腫のような病変の場合は、体内にできるため、全身麻酔下で開腹もしくは開胸手術をする必要があります。

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こういった不具合が出る可能性は、吸収糸よりも非吸収糸の方が高く起こります。

またダックスなどの特定の犬種にも出やすいのですが、まだこれといった定義がなされてはいないので、あくまでも経験論ではという表現になります。

シーラーについて

動物病院によっては、縫合糸を使って結紮をしなくても血管が結紮できるシーラーと呼ばれる機械を導入している病院もあります。

避妊手術の際に、体内で縫合糸を使用しないので、少なくとも反応性肉芽腫は防ぐことができます。

私の経験上の話になりますが、珍しい毛色をした犬、もしくは白毛の多い犬には、特定の反応が出やすいと感じているので、そういった犬種を避妊する際には積極的に使用するようにしています。siroiinu

まとめ

こういった縫合糸による不具合は、術前に分かることはまずありません。

なぜなら、どのような術前の検査を行ったとしても、糸に反応するかどうか調べるすべがないからです。

縫合糸による不具合はしばしば獣医師を悩ませる種にはなるのでが、正直な話、ネットなどで見かけるよりは断然、発生率はごくわずかなので、あまり過度に心配することはないと思います。