どんな手術でも、傷口が開いたら「あれ?おかしいよね?」と思うはず。
確かにそうです。
縫合した部分の糸がはずれて傷が開いてしまった場合は再度縫合するなど早急な対処が必要になります。
ですが、オス猫の去勢手術は他の手術に比べて傷口の管理方法が多少異なるのです。
今回は傷が開いてしまった場合を想定して、他の手術との傷口の管理方法の違いについてご説明したいと思います。
猫の去勢手術では基本的に傷口は開いている
通常の手術では、最初に切り開いた皮膚を元どおりに縫ってふさぐことを基本としています。
それに比べ、オス猫の去勢手術の方法としてはいわゆる『オープンメソッド』と呼ばれるやり方で行っていることがほとんどだと思います。
もちろん『クローズドメソッド』と呼ばれる皮膚を縫う方法も存在するのですが、どちらの手法を取っても治癒に関しては全く変わらないことが経験的に実証されています。
治癒期間に変わりがないだけではなく、皮膚を縫うことで「抜糸」という処置が後で必要となり、嫌がる猫ちゃんを抑えて抜糸するという負担をかける意味でのデメリットがあるために、縫うこと自体を省略する方がメリットが高いと言えるのです。
それゆえに、どの獣医師も皮膚は縫わずにそのまま治癒させる手法を取っています。
どうして縫わなくても平気なのか?
さて、動物は傷口があればなめてしまうことは皆さん当然のごとくご存知かと思います。
では舐めてしまうことが分かっていて、なぜ縫わないのか?
去勢手術のやり方のポイントは、「精巣動静脈を結紮(けっさつ:糸で縛ること)すること」です。これさえしっかり行えば、その他での大きな出血は術後であってもまず起こり得ないのです。
この精巣動静脈を縛った糸と切断した血管の断端は精巣の中からお腹の中の方に引っ張られて奥に入るため、表面からいくら舐めても大事な血管に届くことはありません。
だから心配がいらないのですね。
また、皮膚を切った断面部分も始めからほとんど出血することがありません。
なぜなら、元々血管が細くて少ないところを選んで皮膚を切開しているからなのです。これにより、万が一出血しても自然と止血される程度の量しか出ないのです。
切った皮膚は開いていてもいずれ自然にくっついてしまう
手術が終わったばかりの時はもちろんすっかり傷は開いています。
その後は1週間程度かけて徐々に癒合(ゆごう:傷がくっつくこと)していくのを待ちます。
獣医師によっては手術後に、開いている切開面を押さえて自然にくっつくように寄せておきっます。そうすることで癒合までの期間が早まるので、そうしている場合もあります。
手術された猫ちゃんがほとんど舐めることがなければ傷の癒合は早いのですが、あまりに舐めた場合は傷が開きます。
この際に飼い主さんはびっくりしてしまい、どうしたらいいか戸惑ってしまうと思います。
この点については、開いていても問題がないので、獣医師からその点に関して事前に話されることがないのです。
「大丈夫です。傷が開いてもきちんと予定期間内に治ります。」
傷口をみて慌てる必要はありませんが、万が一垂れるほどの出血が見られた場合は手術した動物病院に連絡してくださいね。
動物というのは何をしでかすかわからない部分もありますから。