オス犬の去勢手術はやるべき?【とある獣医師の経験談】

「去勢手術はやった方がいいでしょう」

ほとんどの獣医師がそう言うと思う。

理由は、将来起こりうる病気の予防になるから。

精巣の腫瘍、会陰ヘルニア、肛門周りの腫瘍、前立腺肥大・・・。

予防できる病気は数多くある。

また、ほとんどのトレーナーがそう言うと思う。

しつけがしやすくなるから。

ぼくは20年近く、都内の動物病院で獣医師として勤務している。

ぼくも飼い主様には当然そのように話している。

世の中の大半の犬たちは、基本的には健康だ。

一方、動物病院に来る犬の大半は、何かしらの悩みを持って来院する。

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正直な話、飼い主様にとって、とても大きな問題であったとしても、獣医師にとっては、日常茶飯事にある些細な問題であることが多い。

特に去勢などの相談は、ぼくたち獣医師にとって、深刻な悩みになることなどあまりない。

去年の夏ごろの話になるのだけれど、ぼくが勤めている病院に一組の老夫婦が訪ねてきた。

生後6か月ほどの日本犬の雑種を一緒に連れてきていた。

来院の理由は去勢の相談とのこと。

あとで飼い主様から聞いた話なのだが、ぼくの勤めている病院は4件目の動物病院だったということだ。

その日は日曜日だったので、外来も非常に混みあい、ぼくとしては正直、早くその相談事やらを終わらせたかった。

一通りの去勢の流れの話をして、早く手術の予定日を決めてもらおうと、やや駆け足で説明をした。

「こんにちは。本日診察を担当させたいただきます獣医師の高橋です。斉藤様ですね。ワンちゃんの名前はたろちゃん。男の子。本日は去勢のご相談ですね?」

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ぼくは診察室に入ってすぐに違和感を感じた。

ご主人様と奥様の座っていた距離が少しはなれていたことと、終止2人ともほとんど無言だっからだ。

「去勢のご料金ですが、小型犬であれば20000円ですが、たろちゃんはちょっと体が大きいので25000円になります。」

奥様のみうなずく。

「退院後に抗生剤を処方します。それと傷口を舐めるようであればエリザベスカラーも。あわせておおよそ6000円ぐらいでしょうかね。」

ご主人様は無反応だった。

「去勢手術はそれほど難しい手術ではないのですが、全身麻酔を使います。ですので、術前の血液検査をさせてください。検査代はおおよそ10000円程度です。」

全身麻酔という言葉に、ご主人様の目がわずかに反応したものの、話だけはどんどん進んでいった。

「手術当日は12時間前からの絶食をお願いしています。飲み水は皆さまが起床したら、器を抜いてください。」

結局、ご夫婦ともあまりしゃべらず、予約だけ入れて帰っていった。

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ぼくはそのあとも診察が続いていたので、すっかりこの時の診察を忘れていた。

多少違和感を感じてはいたものの、ぼくにとっては、いつものよくある診察だったし、その時はあまり印象に残るようなものでもなかった。

ただ、翌日。ちょっといつもと違うできことが起きた。

ご主人様だけが来院され、話を聞きたいという。

何の話かはあまりよくわからなかったが、とりあえず診察室に入った。

「なぜ去勢手術をしないといけないのか、納得いく理由を知りたい。」

昨日の静かな態度と一変し、やや大きく、少し興奮気味な声を出していた。

言われて一瞬、ぼくは質問の意味がすぐに理解できなかった。

そして次に思ったことは、昨日の診察でぼくの態度に何か失礼があったのだと思った。

「昨日の診察で何かご不明な点はございましたか?」

さんざん迷った挙句に出た言葉がそれだった。

「別にそういうわけではない。今はネット社会だからね。去勢のことは調べればすぐ出てくる。」

ご主人様の言葉の真意がつかめず、先ほどの言葉の意味をもう一度考えてみた。

「去勢手術をなぜするのか?」

はっきりいって、そんなことをストレートに聞かれたことは今までなかった。

「将来に起こりうる病気の予防や、しつけがしやすくなるメリットが・・・」

「だから、それは知っているって。去勢はやった方がいいのはなんとなくわかる。でも本当にしないといけないのか?」

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去勢手術を行なわないといけないかどうかは、基本的には飼い主が決めることだ。

義務ではない。

「必ずやらないといけないわけではありません。もちろんデメリットもありますから。」

ネットで調べているなら、そんなことは知っているのだろうなとは思いつつ、返す言葉が見つからず、続けて説明してみた。

「2割ぐらいの仔が太りやすくなるとは言われています。ただ食事をコントロールすることで肥満は予防できます。」

ぼくはさらに言葉を続けた。

「またダックスなどの特定の犬種では毛質が変わることがよく知られています。その他のデメリットは科学的な証明がなされていないので、現時点ではあるともないとも言えません。」

つまらなさそうにぼくの説明を聞いていたご主人様が、言葉をかぶせてきた。

「麻酔のリスクは?全身麻酔なんだろ?麻酔をすると寿命が縮まるっていうじゃないか。」

「麻酔は蓄積されるものではないので、決して寿命を縮めるものではありません。ただ全身麻酔なのでリスクは0ではありません。」

「そこだよそこ。0でないと困るんだよ。麻酔をかけずに去勢をすることは不可能なの?例えば部分麻酔とか。」

「動物は基本的には大人しくしていないので、局所麻酔が適応できる症例は限られています。去勢のような血管を結紮しないといけないような手術は、残念ながら適応外です。」

「やっぱりそうか・・。」

ぼくはご主人様が考えていることがなんとなくわかってきた。

去勢はしたい。でも麻酔が怖い。

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実際こういった飼い主様は少なくはない。

ただ、若い個体に去勢手術を行うリスクと、しないで高齢になったときに何かしらの疾患を発症するリスク、どちらが大きいのかと言えばもちろん後者だ。

「もう一回考えてくる。」

そう言って、ご主人様は肩を落としながら帰っていった。

翌日。天気はあいにくの曇り空。

水商売とはよく言ったもので、天気が悪いとお客さんがこない商売を水商売というらしい。

そういった意味では動物病院は立派な水商売だ。

外来の飼い主様もぽつぽつくる程度の平和な日だったが、午前中の診察時間の終わり間際に、例の飼い主様が、ご夫婦そろって来院された。

犬は連れてはいなかった。

「何度もすいません。」

今回は奥様の方から切り出した。

声を聞くと非常に落ち着きのある上品な女性だった。

「家でよく話し合ったんだけど、去勢手術はやっぱりやめようかと思いまして。申し訳ないのですが今回の予定はキャンセルしていただけますか?」

ぼくは正直、深入りすることはしないほうがいいと直感的に思ったので、

「わかりました。」

と、簡単な返事ひとつで終わらせようとした。

ただ、何か引っかかる。なんとなくこのまま終わらせてはいけないような気がした。

「こういったものはタイミングなんだと思います。犬の体調、飼い主様の気持ち。今はそのタイミングではないのだと思いましょう。またそのタイミングが来たら、いつでもご相談してください。」

ぼくは相手の出方を探るような言い回しをしながら、飼い主様の表情を見つめた。

「うちはそのタイミングを逃したって言うことか・・・。」

ご主人様はため息混じりにそうつぶやいた。

しわが多いその顔がさらにしわっぽく見えた。

「まだこの仔は若いんだし、タイミングはこれからも何回もやってきますよ。」

ぼくがそう言うと、奥様が横目でご主人様を見つめながら、

「そうではなくて、前の犬のことなんです。」

そう言ったその目はなぜかほんのり赤い。

「前の犬というのは?」

「去年の春に亡くなって、この子は今年の春に新しく飼い始めた仔なんです。」

「そのわんちゃんは去勢をしなかったのですか?」

「そう、その時去勢をしていないせいで死んじゃったって、その時のお医者様がおっしゃったので・・・。」

ぼくはちょっと不可解な気持ちになった。

去勢手術は確かに病気の予防にはなる。

ただし、去勢をしないからということと、死んでしまうということの因果関係はよく意味が分からなかった。

「差し支えなければ、話していただけませんか?」

少しの沈黙をおいて、奥様が落ち着いた口調で話を続けた。

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「以前飼っていた犬が、おしりが腫れちゃう病気・・・そう会陰ヘルニアになって。最初のうちは少し腫れているねって言う程度だったのが、だんだんと大きくなって・・・。」

会陰ヘルニアというのは、基本的には未去勢のオス犬がなる病気だ。

雄性のホルモン異常が関与すると言われている。

症状が進むと、肛門周囲の筋肉が薄くなってしまうため、筋肉と筋肉に隙間が広がり、その隙間に腸や、場合によっては膀胱などが入りこみ、排泄が困難になる病気だ。

あまり珍しい病気ではない。

「ある日突然力んだと思ったら、いつもと様子が違う。あれって?それで急いで病院に行ったら、肝臓がとても悪くなっているって。」

「違うよ、腎臓だろ?」

ご主人様が何かを思い出したかのように、奥様の話を訂正した。

おそらく、膀胱が会陰ヘルニアを起こした部分に入りこみ、尿道閉塞を引き起こしたのだろう。

会陰ヘルニアが進行するとたまに起こるケースなのだが、短時間で急性腎不全を引き起こすこともある。

「それでその時のかかりつけの医者が、急いで手術をしなければいけないって言ったんだよ。その時はわけもわからなかったので、ついお願いしますって答えてしまったんだ。」

ご主人様は目を伏せがちにつぶやいた。

「その時はもう15歳くらいだった。今思えば、手術なんてとても乗り越えられないとは普通は思っただろうけれど、その時には医者がやれば間違いがないって勘違いしていたのかなぁ。」

ため息とともに出てきた自分の言葉で、さらに落胆した様だった。

「それで手術は無事に終わりましたって連絡があったあと、安心していたらその1時間後にいきなり急変しましたって連絡が入って。」

そうそう、と奥様が小さくうなづいた。

「あの時は頭が真っ白になった。」

ご主人様がため息とともにまたつぶやいた。

「主人から急変したって言われたんだけど、何が何だかわからなくて。何も考えられないし、どうしていいかもわからなかったんです。とにかく何とか病院に行って、手術台の上で横たわった姿を見た時・・・あの時の気持ちは今まで生きていた中で初めて感じた衝撃でした。」

いつのまにか、ぼくはじっと飼い主様の話に耳を傾けていた。

「ベロは触っても冷たい、目は半分開いたまま、でも首元をさわるとまだ温かい・・。お医者様が頑張っていたのはわかっていたのですが、でももうだめなんだろうなと同時に思って。」

「人でも10分かそこらで脳死になるって言うだろ。だから犬だったらもっと短いんだと思うんだよ。その時の医者が必死になってやっている心臓マッサージも見ているのがとてもつらかった・・・。」

このご夫婦は当時のことをまだ鮮明に思っているんだろう。

だんだんとその声が震えてきたのがわかる。

「主人とも話していたんです。明日面会にいこうねって。明日になったら楽になったあの子の顔を見れるって」

「なにせ最後にあったのが、急に調子に悪くなった時だからね。病院においておく時も、なんでこんな苦しい時に一緒にいてくれないんだって。なんでここに置いていくんだって顔をしてなぁ。」

ご主人様の目線はどこか遠くのところを見つめていた。

「でも死んでしまったものはしょうがない、その時はそう思ったんだ。もう戻ってこないことはわかりきったことだ。だからその医者を責めるつもりなんてこれっぽっちもなかったんだ。」

そして、ご主人様は少し声をあらげて、ぼくに言ってきた。

「その時にその医者が言ったんだ。若いうちに去勢をしていればこんなことにはならなかったのにって言ったんだ。」

そこまでの話を聞いたときに、ぼくはすべてを悟ったような気がした。

奥様の目はもう人と目を合わせられるような状況ではなかった。

すでに涙が頬を濡らしていた。

「その時、家ではつらいことがずっと続いていたんです。私のつらい気持ちを全部ひきうけてくれてたんだと今でも思っています。あの子のおかげで私はだいぶ救われました。でも、高齢だったし、いつかはいなくなるんだろうって覚悟はしてたんです。でも、先生にそんなことを言われたら・・。」

ご主人が遮るようにしたが、奥様はさらに続けた。

「私たちがあの子を殺したんじゃないかって。あの日から毎日毎日、どうして死んでしまったのだろうってぐるぐる回っていて。あの子がよく行っていた散歩の道に行っただけで過呼吸になってしまうような日が続いたんです。」

獣医師だけの話ではないとは思うけれど、人間というのは思った通りに事がいかなかったら、必ず何かのせいにしたがるものだ。

だからといってそれを飼い主のせいにするのは、獣医師の良識としてどうなのかと思ったが、今話していもしょうがない。

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問題はこれからどうするのかだ。

「それで最近やっと何とか気持ちの整理がついて、新しい仔をむかえる準備ができて。」

「そう、さっき先生が言った通り、タイミングだよ。べつにそういうつもりはなかったんだけど、この仔を見たら、そうなんだって。また一緒に暮らすべき犬なんだって、その時そう思った。」

「実際、飼い始めてから、また家の雰囲気がすごくよくなって。恥ずかしい話、主人との会話も前以上に戻って。でもやっぱり忘れられない。去勢をしていればって言われたことが頭から離れられなくて。」

「去勢をしなければ病気になるのはわかる。またあんなつらい思いをあの子にはさせたくない。ただ去勢だって麻酔だろ、手術だろ。もしもまたあの時のように手術のあとに死んじゃったら、それって飼い主のせいじゃないか。手術を選んだのは自分たちだから。」

「だから主人と話して、この近所で一番大きくて、一番評判がいい病院だったら絶対に大丈夫だろうって。だから自分達でも色々探して、紹介もされたのでここにしようって。でもいざとなったらだめね。」

「先生も去勢は飼い主の責任と思うだろ?」

いやそうじゃないですよと言おうとした時、ご主人様がおっしゃった。

「医療に絶対はないってよく言うじゃないか。それを含めて理解しろってことなんだろ。」

少し沈黙が続いた。

ぼくは少し躊躇したかもしれない。

でも同時に、ぼくは何かしてあげたいと心から思った。

このままにしていたら、去勢手術をしようがいまいが、この人たちはずっと後悔し続けるるだろう。

しかもその原因が、単なる去勢手術だ。

「医療には絶対はない、それは事実だと思います。なので常にくらべあいっこです。やるリスクとやらないリスク、どちらが高いのかと。その価値観は担当した獣医師の診療方針にも影響を受けるのだとは思いますが・・・。」

ぼくは続けた。

「やる、やらないで迷った時、人間というのは、やらなくてもいい理由を何個も考えるんだと思います。理由はやりたくないから。やらなかったことで後悔をしたくないから。それでも結果として、やらないといけないことなんていうのは世の中にはいっぱいあるんだと思います。」

明らかに年下のぼくが、年上の方にいう話ではないのかもしれないけれどさらに続けた。

「今回の場合、飼い主様のお話を聞いて率直な感想としては、去勢手術はやるべきだと思います。理由はありません。でもそう思いました。何万回聞かれても、ぼくの話はぶれません。去勢はやるべきだと思う。」

多分この人たちは誰かに背中を押してほしかったんだと思う。

自分たちだけでは踏ん切りがつかないから。過去のことがあるから。

もしかしたら、去勢手術で悩んでいる飼い主様って多かれ少なかれそうなのかもしれないと個人的には思う。

「そうか・・。」

ご主人様がそう言った。

「ごめんなさいね、先生。忙しいのにこんな話を聞いてくれて。」

「そんなことはないですよ。」

「こんな話聞いて少し重く思ったんじゃない?それでも先生、うちの犬を手術してくれるかい?」

その目はどこか懇願するような目だ。

今度はぼくは躊躇せず言った。

「万が一はあります。もちろん手術ですから。それは否定しません。でも万が一は万が一です。なんの慰めにもならないかもしれないけど、ぼくは、一生かかっても去勢手術を10000回もすることはできませんよ。だから万が一は一生来ませんよ。ね?」

その時ご主人様が初めて少しニコッと笑った気がした。

やることが決まったら、人間というのは結構割り切れるものだ。

血液検査の値は問題なかった。

麻酔の代謝に関連する肝臓、腎臓両方とも正常だ。

通常であれば、去勢手術ぐらいなんでもないと思う。

ただ、飼い主様の希望で手術中は点滴を流すことになった。

点滴を流すことで全身の循環がよくなり、麻酔の覚醒がスムーズになるので手術の安全性が増すからだ。

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お金で安全を買うというわけではないが、別途で費用が5000円ほどかかる。

何かしら不安を抱いていているのであれば、是非とも検討してほしい。

手術当日は午前中に連れてきていただくのだが、ご夫婦そろって朝一で来院された。

もう迷いはないらしい。

「それじゃぁ頑張りましょう。」

預かるときの診察は、結構あっさりしたものだった。

通常の手続きのみしてすぐに終了した。

手術はお昼の休診時間中に行うのだが、その際待機されるかと聞いたら、自宅で待つとのことだった。

ただし、終了後の連絡は必ずほしいと一言だけ残して、一度帰宅された。

去勢手術は、陰茎と陰嚢の中間ぐらいに切開をいれ、精巣を取りだし、血管を結紮し摘出する。

手技的には非常に単純な手技だ。

手術は問題なく終わった。

麻酔も問題なく覚醒した。

当たり前と言えば当たり前だが・・・。

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手術後の連絡は意外と冷静だった。

もっと喜んでくれると思っていたので、ちょっと拍子抜けだった。

以前、その後に急変の連絡が入ったという話を思い出したので、まぁ当たり前かと一人で納得した。

翌日の午前中に退院の予定だった。

やはり朝一番で夫婦そろって来院した。

犬の一般状態は問題なし。

術創が少し腫れて内出血をおこしているぐらいだ。

基本的に術後の腫れは1週間もあれば完全に引いてくるので、大した心配はいらない。

ただ日本犬は非常に繊細な性格が多く、傷口をよく舐めるので、エリザベスカラーが必須だ。

また、術後に食欲がなくなったり、便秘になったり、粗相をしたりと、精神的に安定しない状態が数日続くことが多い。

これらも特に処置は必要としないのだが、飼い主様の心配をあおる種になる。

まして今回の飼い主にとってはなおさらだろう。

退院の時にそういったことがあることをしっかりと伝えた。

あぁそうですかと軽く一言だけ返してくれた。

一日ぶりに触れるわが子しかもう頭にない様だ。

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退院した3日後に傷口の再診を、7日後には抜糸を行った。

食欲が若干落ちていたそうだが、抜糸のころにはほぼ問題なく回復していた。

「終わってしまえばあっという間だったね。」

ご主人様がうれしそうに言ってくれた。

「あとは体重などには気を付けてあげてください。トリミングは抜糸が終わったので、明日でも大丈夫ですよ。散歩も始めても問題はありません。」

「先生ありがとな、本当にありがとう。」

去勢手術程度でというと語弊はあるかもしれないけれど、この程度でここまでお礼を言われるのは少し照れくさい気がした。

それでも人に喜んでもらえることはうれしいことだ。

獣医師になってよかったなと感じる一瞬でもあった・・・。

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今回のお話は実際にあったことを少しかいつまんでご紹介させていただきました。

いつもの記事とはちょっと趣向がちがったかもしれませんが、みなさんに去勢手術の正確な情報を知っていただきたいと思って書いてみました。

「去勢手術はやった方がいいでしょう。」

100回聞かれたら、100回ともそう言うのが大半の獣医師の意見です。

ただ、飼い主様とその愛犬がおかれている状況は十人十色だと思います。

このブログのことをネットの片隅で見つけくれて読んでくれた人なのであれば、きっと去勢手術を悩んでいるのでは?と思っています。

偉そうなことを言うつもりはありませんが、私たちはもしかしたらあなたの背中を押してあげることができるかもしれません。

安全な去勢手術を行うための努力は惜しみません。

あなたの家族への負担も最大限減らすことを約束します。

だから、もしちょっとでも相談したいことがあったら、いつでも私たち獣医師にお気軽に相談してください。

このお話の獣医師のように、流すようなことは絶対にしませんから!(笑

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