動物病院でメス猫の「望まない妊娠」に遭遇する事は決して少なくありません。
飼い猫の妊娠が発覚するケースとしては
- 外飼いの場合。
- 室内飼いだが、発情期に外へ脱走してしまった場合。
- 未去勢のオス猫と、未避妊のメス猫を同グループで飼っている場合。
- すでに性成熟を迎えている猫を保護した場合。
などが考えられます。
最後のケースは別として、基本的には飼い猫への避妊手術を行っておく事でいずれも防ぐ事ができます。
しかし、ちょっとした油断や、思いもかけず…ということも勿論あるでしょう。
そのような時、飼い主には何ができるのでしょうか?
妊娠診断はいつからできる?
メス猫の妊娠診断は、超音波検査、レントゲン検査などがよく用いられます。
教科書的には、超音波検査で妊娠19日以降、レントゲン検査で40日以降で診断可能とされています。
実際には、妊娠しているという診断よりも、「確実に妊娠していない」という診断をする方が難しいので、妊娠20~30日程度から診断ができるようになると考えてもらうのが良いでしょう。
そしてメス猫の妊娠期間は63日程度です。
この出産までの間に飼い主は授かった命をどうするのか十分に考えなくてはいけません。
出産をさせるか考える
妊娠の可能性があった時の選択肢としては
- 妊娠の有無に関わらず、交配の可能性があった時点で早急に避妊手術を行う。
- 妊娠診断が可能な時期まで待ち、妊娠が成立していた場合は堕胎手術を行う。
- そのまま出産のサポートをしてあげる。
ここで一番大切なのは、産まれてくる子猫達にしっかりと責任を持つ事です。
メス猫は平均3~5頭の子猫を産みます。
自分が全頭を育てていけるのか?引き取ってくれる人はいるのか?十分に考えてから出産を決断するようにしましょう。
「堕胎手術はかわいそうだから」という理由だけで、子猫を育てていく事はできません。
また、出産や堕胎手術にはリスクも付きまといます。
猫での難産は多くはありませんが、もしもそのような時に帝王切開に踏み切ることはできますか?
一方、堕胎手術となれば、避妊手術に比べるとリスクは高くなります。
そして、妊娠後の日数が経過して胎仔が大きくなる程、手術の負担も大きくはなります。
これらは一か八かの危険を伴う手術ではありませんが、その点も理解をしておく必要はあるでしょう。
堕胎手術はどのような手術か?
基本的には「出産を望まれない」というのが、堕胎の理由になると思われます。
そのため、通常堕胎手術と避妊手術は同時に行います。
つまり堕胎手術とは、胎仔の入った子宮の摘出手術と、卵巣の摘出手術という形になります。
このようにして子宮や卵巣ごと摘出することで、手術後の生殖器のトラブルを防ぐ事ができますし、今後の妊娠も回避する事ができます。
その発育ステージに関わらず、胎仔は子宮に包まれたまま摘出を行いますので、私たちと直接顔を合わせるということは実はあまり無いのです。
手術の傷の大きさは胎仔の大きさによりますが、5㎝以上の大きな傷になることもあります。
それでも、私たちは経過が良好であれば2泊程度の入院で退院とさせてもらうことが多いです。
まとめ
堕胎手術は猫にとっても、飼い主にとっても辛い手術になります。これは獣医師も同じです。
望まない妊娠、堕胎、捨て猫、こういった悲しいストーリーを作らないために、避妊手術は重要な役割を担っているのです。
もしも自分の猫が妊娠してしまったら…愛猫の信頼や愛情にどのように応えていくのかも是非一度考えてみて下さい。