去勢手術をする理由としてあげられるのが、将来的な病気の予防のためというのが大きな理由だと思います。
病気の予防、すなわち健康でいられるための処置として行うわけなのですが、実際に去勢した犬は長生きをするのか?と単純に疑問に思う方もいらっしゃると思います。
残念ながら、具体的なそれを示すデータはありません。
ですが、今回は獣医師としての経験則で、去勢手術を行ったオス犬は、行わなかったオス犬に比べ長生きするのか?ということについてご説明したいと思います。
麻酔、手術の影響という点では?
多くの飼い主様がご心配されることですが、手術で使用する麻酔や手術そのもののリスクは、去勢手術といえども「0」ではありません。
滅多にあることではないですが、手術を行い、何らかの理由で命を落とすことや、重大な後遺症を残すこともあり得るとは思います。
そういった意味では去勢手術をすると寿命が短くなることもあるとは思います。
ただ、麻酔や手術の負荷は、それほど長期間、体内に残存するものではないので、麻酔薬が蓄積され寿命が縮むことはありません。
通常であれば、そこまでは気に留める必要はないと思います。
病気の予防という点では?
去勢を行っていると予防できる代表的な病気は、精巣の腫瘍、会陰ヘルニア、前立腺疾患などです。
これらの病気が命にかかわってくる状況になるのは、実際のところそれほど高くはありません。
高齢で手術もできる状態ではないので、ある程度の介護をともないながら、生活していく老犬もたくさんあります。
ただし、生活上の質は格段に下がることが多いので、そういった意味では寿命が縮むことはあるかもしれません。
逆に去勢手術によって引き起こされるような病気は色々示唆されるものはあるのですが、科学的な根拠に乏しく、統計学的に優位なデータが得られていないので、今回は割愛します。
去勢後の肥満という点では?
去勢後のデメリットして、全体の約20%~30%の犬が肥満になり少なります。
肥満が大きな原因となり引き起こす病気は色々あります。
また運動能力も衰えるので、思わぬ事故、けがの原因にもなり得るとは思います。
そういった意味では、犬の寿命を縮める大きな原因となります。
無論、食事療法などを行えば肥満は予防できるので、そういった意味では飼い主様に依存するところが多いとは思います。
性格が大人しくなるという点では?
性格が寿命にかかわるかと言えばそういうことはありませんが、無駄吠えが少なくなるという意味では、心疾患や筋骨格系の病気はかなり防げる、もしくは悪化が防げるのでそういう意味では寿命は延びると思います。
逆に高齢犬で去勢した場合、文字通り勢いがなくなり、老いが早まるというのはよく言われることです。
総合的な意見
去勢の最大のメリットは特定の病気の予防であることは間違いなのですが、正直な話、それがどれくらい寿命の延長につながるかは未知数だと思います。
ただ未去勢オスがなるような疾患は、犬だけでなく飼い主様にも大きな負担を強いることになるので、そういった意味ではかなり有用性のあるものだと思います。
一方で肥満になりやすいという去勢のデメリットは、色々な疾患を引き起こしやすく、場合によっては寿命を大きく短縮させることもあります。
何がいいかは比べる対象がないので何とも言い難いとは思いますが、個人的な意見で言えば、去勢をして、かつ太らせないようにした去勢犬が一番長生きする犬だと思います。