去勢手術や避妊手術に限らず、外科手術の前に血液検査をすすめられると思います。
これはぜひ獣医師としては手術前にやってもらいたいことの一つです。
場合によっては、さらにレントゲン検査や超音波検査なども行う必要があることもあるでしょう。
では、なぜそれほど血液検査が必要なのか?
そのことについてお話しましょう。
手術中の麻酔のため
手術中は猫ちゃんに眠ってもらうために、麻酔をかけます。
麻酔は色々種類があり、注射薬や吸入麻酔薬など様々で、それぞれの薬の効き方や効く速度、副作用や薬が代謝される速度などもそれぞれで異なります。
しかし、多くの麻酔薬は「腎臓」や「肝臓」といった臓器で代謝されることが
多いのです。
そこで、猫ちゃんの身体のそれらの臓器がうまく働いているかを、血液検査でチェックしておく必要があります。
腎臓や肝臓の血液検査が異常値であれば、手術よりも先にその病気の原因の追究と治療を行ってから、問題ない状況で手術をすべきでしょう。
もし、問題のある状況のまま手術をしてしまったら、麻酔の効きが悪かったり、麻酔がらさめなかったり、最悪の場合そのまま起きずに亡くなってしまうケースもありえるかもしれません。
ほかの病気がないか確認するため
血液検査は行う項目によって、わかることも変わりますが、多くの病院で行っている血液検査は、
・貧血はないか
・止血作用は働くか
・感染症にかかってないか
・血糖値が高くないか・低くないか
・コレステロール・中性脂肪は高くないか
・タンパクは高くないか・低くないか
・腎不全はないか
・肝障害はないか
などなど、多くの身体の状態がわかります。
貧血や止血は、出血が確実に起こる手術にとっては重要なことは明らかですが、
その他の血液検査はそんなに必要があるか疑問に思う方も少なくないかもしれません。
しかし、思いのほか、それぞれの血液検査の結果が手術の結果を左右する場合があります。
・感染症は子宮に膿がたまった子宮蓄膿症の場合もあり、手術のリスクが上がり、手術の手技や準備するものが変わってきます。
・高血糖の場合、糖尿病の可能性もあり、手術のリスクが上がりますし、先にインスリンの治療開始が必要になります。
・コレステロールが高い場合は肥満状態の可能性があり、麻酔のリスクが上がります。
といった、少しの血液検査の結果で猫の病気が発見され、それが手術がうまくいくかどうかに関わっている場合があるのです。
特に気をつけたい「腎臓」
若い猫ちゃんはあまりないですが、10歳以上の高齢の猫ちゃんは、「腎臓病」になる可能性が高いと言われています。
腎臓病かどうかは、血液検査で発見されることが多いでしょう。(一般的に簡易的に行われる腎層の値に高値が出ている場合は、既に腎不全が進行しているケースが多いため、一緒に超音波の検査や尿検査、さらに早期で腎機能の悪化がわかる血液検査を行う場合もあります)
早期の発見、早いうちからの治療、食生活の改善などが重要な病気です。
そして、この病気の怖い部分は一度悪くなった腎臓はもとに戻ることはほぼないということです。
後々後悔しないためにも、去勢手術・避妊手術を行うことが多い若齢のうちから血液検査で猫ちゃんの血液の正常値を把握しておいて、毎年定期的に確認し、少しでも悪化や変化があれば、できる予防方法や治療を進めていくことをお薦めします。
まとめ
何はともあれ、血液検査は安全に手術を終えるためのツールです。
問題なく手術ができるように血液検査を行いましょう。