これから避妊手術をしようと考えて、ご近所のお散歩友達から色々な話を聞いたりすることもありますね。
実際に手術された方に話を聞くと、手術の傷は大きめの仔や小さめの仔など様々だったりすると思います。
飼い主様としては傷口はやっぱり小さめがいいよね!と考えるとは思いますが、こればかりは絶対に小さくできるという保証はありません。
今回はどんなことが傷口の大きさに関わってくるのか書いていきます。
手術方法の違い
メス犬の避妊手術では卵巣のみを摘出する病院もありますが
今回は卵巣と子宮を一緒に摘出する『子宮卵巣全摘出術』でお話していきます。
当院では犬種や体格の違いもありますが、通常は1.5cm~4cmぐらいの傷になります。
小さな傷で済むのは『子宮釣りだし鈎』というフックのような器具を使って
小さく開けた傷口から子宮と卵巣をひっかけて引っ張り出してきて手術を行うからです。
ただしこの場合には小さな傷しかあけないため、お腹の中は盲目的になります。
もちろんお腹を閉じる前には十分に出血の有無などを確認しますが
やはり全てを目で見て確認できるわけではありません。
そのため、この器具を使わずに始めから大きめに切開して
目視下で手術を行う病院もあります。
その場合にはチワワのような小型犬でも5~6cmの傷になるでしょうが
隅々まで確認した上でお腹を閉じることができます。
体型による影響
子宮釣りだし鈎を使って手術をする場合にも色々な状況で傷口が大きくなることがあります。
体型がぽっちゃりしている肥満型の仔は皮膚の下に厚い脂肪の層があるため、
小さな傷口では周囲から脂肪が圧迫してきて邪魔になります。
また腹腔内脂肪がついている隠れ肥満も、卵巣や子宮周囲の膜に脂肪が付着していて
傷口を拡大しないと引っ張り出せないことがあります。
生理中の手術
手術予定を立てていたが生理が来てしまった…という方もいると思います。
生理中でも避妊手術は可能ですが、卵巣や子宮への血流が増えているため、
周囲の血管が太くなっていたり子宮そのものがブヨブヨした状態になっています。
そのため手術時に無理にひっぱることができないため傷口を大きめにすることがあります。
- この状態は生理後2カ月程は続きますので
予定を組みなおす場合にはそれ以降がお勧めです。
靭帯の伸びやすさ
卵巣は卵巣堤索(卵腎靭帯)という靭帯で背中側にくっついています。
卵巣と子宮を引っ張りだして手術するためには、この靭帯が伸びてくれないといけません。
ただこれは個体差もあり、この靭帯が硬く伸びない仔では
なかなか卵巣・子宮を出してこれません。
この場合には手術中に傷口を広げて対応します。
まとめ
手術方法については事前に獣医師に確認することができますので
納得する方法の病院をみつけましょう。
上記の要因で傷口が大きくなってしまったとしても
傷の治癒にかかる時間はほぼ変わりません。
なにより手術を受けるワンちゃんの安全第一ですので
必要な場合には臨機応変な対応が必要になることをご理解ください。