犬や猫における手術器具ってどんなものを使っているかご存知でしょうか?
(注:ここで言う手術器具とは鉗子・鋏といった鋼製器具のことを指します)
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
小動物に使う手術器具というのは、人に使う手術器具と基本的に同じものを使っています。
その中で、いくつかの器具で小動物用に専用で作られたものがあるのです。
今回はその中で猫の避妊手術で大活躍する器具をご紹介します。
猫の避妊手術で大活躍する「子宮吊り出し鉤(しきゅうつりだしこう)」とは?
そうです。見出しにある名前の通り、この「子宮釣り出し鉤」という器具が猫の避妊手術においてほぼ必須と言っても過言ではない物なのです。
写真のように、先端がやや丸みのある鉤型をしており、それが片方もしくは両端についている形が一般的です。
猫の避妊手術は子宮と卵巣の全摘出、もしくは卵巣のみ摘出する方法のどちらかで行われます。
その際に傷口をできるだけ小さくすることを目的として開発された「子宮吊り出し鉤」が子宮と卵巣のみをピンポイントで摘出することができるのです。
この「子宮吊り出し鉤」で子宮と卵巣を引っ掛けるようにして、術創の外に吊り出すことを目的とした器具なのです。
おそらく小動物の手術を行う獣医師の多くはこの「子宮吊り出し鉤」を使っている、もしくは使ったことがあるはずです。
「子宮吊り出し鉤」を使うと手術の傷は相当小さくできる!
では、この「子宮吊り出し鉤」は実際どのように使っているのでしょうか?
できればこちらの動画でご確認いただくのが最もわかりやすいと思います。
手術をする際は猫ちゃんを仰向けに寝かせますので、寝かせた状態でお腹を小さく開け、この「子宮吊り出し鉤」で丁寧に吊り出します。獣医師は子宮と卵巣がどの位置に配置しているか分かっていますので、むやみに探っているのではなく、器具をどの向きでどのように動かせば子宮がつり出されてくるのか理解した上で使用しているのです。
また、犬や猫の子宮は柔らかく伸びやすい解剖学的構造をしているため、この器具で引っ張ってくることが可能なのです。
子宮と卵巣が最低限の傷口で引っ張り出すことさえできれば、あとは獣医師の技術で出血なく摘出できるので、術創の大きさは子宮の直径の大きさ程度で済むのです。
通常は体重3キロ程度の一般的な猫の大きさであれば、小さいものだと1センチ前後の傷で済むこともあるのです。
まとめ
今回は手術器具のお話でしたので少しわかりにくかったかもしれませんが、
なぜ傷口が小さくできるのか、術創の大きさに病院差や個体差があるのかをおわかりいただけたかと思います。
小動物の避妊手術の実施にはごくごく一般的に使用する手術器具ですので、特に器具の希望をすることはなくてもいいかとは思いますが、傷が小さく済むかどうかを獣医師に聞いていただいた際に小さめにできると返答した場合は、おそらく「子宮吊り出し鉤」を使用しているものと考えられます。
どうぞ参考になさってくださいね。