獣医師からお答えする【犬・避妊手術】の失敗?談

避妊手術はどこの動物病院でも行っていますし、ほとんどの飼い主様が行っているので、とても簡単な手術と思われがちです。

確かに術式はとても単純ですが、体重が30kg以上もある大型犬だったり、腹腔内の脂肪が多かったりすれば、小型犬でも手術はかなり困難になる場合もあります。

また、全身麻酔をかけて行いますので、麻酔の管理は決して気が抜けるものではありません。

避妊手術の手術室。麻酔ってどうやってかけているの?
犬の避妊手術をするときに必ず行う麻酔。手術においてはとても重要な部分になりますが、手術室での麻酔の様子についてはわからないことばかりかもしれ...

ハインリッヒの法則と言って1件の重大な医療事故の陰には29件の軽微な事故と、300件のヒヤッとする、ハッとするようなニアミスがあると言われています。

ヒヤリハット

幸いにも私自身の経験上、避妊手術において、死亡事故を含む重大な医療事故は発生したことはありませんが、重大ではないにせよ、今まで起こったヒヤリハットの例を、皆さまに公表したいと思います。

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術中の意図しない出血

術中に思いがけず大量の出血が腹腔内で発生することは極たまにあります。

大抵は、結紮すべき血管がしっかり結紮できていなかったことによって起こります。

その際には、術創を拡げて出血部位を確認したうえで、結紮をし直します。

出血が止まったことをちゃんと確認してから閉腹しますし、術創は大きくなるとは言っても、その後の経過にはあまり影響は出ません。

色々な意見はあるとは思いますが、手技的な問題とは言いつつも、胸が深い犬種や、特に脂肪が多い犬の避妊手術では、どんなに気を付けていても起こりうる可能性があります。

太った犬

個人的には、出血のあるなしが問題ではなく、イレギュラーが発生した後の処置が適切かどうかが問題だと思います。

術中の意図しない麻酔の弊害

術前に万全の体制を整え、あらゆる検査に対して異常な所見が得られなかったとしても、麻酔は実際にかけてみないとわかりません。

体内での代謝の問題なので、例えは悪いかもしれませんが、ある人がお酒に強いか弱いのかはお酒を経験しないとわからないのと同じことです。

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避妊手術は、大体が若くて元気のいい犬に対して行いますが、それでも術中に不整脈が発生したり、心拍数が急に低下したりすることがあります。

よく飼い主様から「麻酔の量を少なくして下さい。」とお願いされることがありますが、ほとんどの病院では吸入麻酔(ガス麻酔)を使用するので、量を必要以下に少なくすることはできません。

唯一できることは、できるだけ迅速に手術を終わらせることです。

それでも、問題が発生するときありますが、発生した際に迅速な対応をすることが大切だと思います。

私自身の経験としては、麻酔覚醒後に頭位捻転といって、首が曲がった状態がしばらく続いてしまった犬にであったことがあります。

幸運にも、2週間ほどで完全に回復はしましたが、2週間は心配で寝れない日が続きました・・・。

術後の術創の異常

これは動物を治療する上では常に悩みの種となります。

人のように自分で自分の傷口を管理してくれるわけではなく、どんなにしっかりとした管理をしていたとしても、ちょっと目を離したすきに舐めたり、噛んだりして術創が腫れたり、傷口が開いたりと悪化させてしまうことがあります。

エリザベスカラーや腹帯をつけて、術創を保護しますが、完璧なものはなく、年間を通して1件か2件は、傷口が治癒しきるまで長期間かかるケースがあります。

以前カラーをしても器用に術創を掻いてしまう犬にであったことがあります。

精神安定剤などを使用し、なんとか良くはなりましたが、1か月ほどかかったとは思います。

エリザベス・カラー時間はかかりますが最終的には治癒しきりますので、過剰な心配はしなくてもいいとは思います。

術後の体調悪化

手術がどんなに適切に行われたとしても、手術が行われた犬はそれ相応の負担が背負うことになります。

術後の回復具合は、ほぼ本人次第になりますが、傾向として分離不安傾向が強い犬、興奮しやすい犬、そして飼い主様が過剰なご心配を抱いてしまう場合には、非常に遅くなると思います。

吐いたり、下痢したり、食欲不振があったり、逆に便秘になったりと、手術後の回復過程では色々な症状が出ますが、大抵数日で術前の状態に治癒します。

まとめ

医療は100%ではないとよく言いますが、確かにその通りだとは思います。

ただ、みなさんがおっしゃるところのいわゆる医療ミスは、避妊手術に関して言えばほぼ起こりえないものと考えていただいて結構かと思いますので、過度な心配はせず、適切な時期に手術を受けていただくことをお勧めします。