腫瘍というのは、元来どこにでもできます。
そこに細胞がある限りは、その細胞が腫瘍化すれば腫瘍になるので、理論上どんな場所にも腫瘍は発生します。
犬の悪性の腫瘍のなかで一般的なもので言えば、血液のがんであるリンパ腫、乳腺にできる乳腺腫瘍、もしくは肥満細胞腫といったものが一般的です。
実際には陰茎にできる腫瘍はあまりないのですが、ないこともありません。
今回は聞きなれない腫瘍、可移植性性器腫瘍についてご説明したいと思います。
可移植性性器腫瘍とは?
可移植性性器腫瘍とは、腫瘍のなかでは珍しく伝染性の腫瘍で、性交による伝播が一般的です。
オス犬、メス犬どちらの生殖器にも発生しますが、舐めることによっても伝播するため、皮膚や口、肛門の粘膜などにも発生します。
オス犬の場合、陰茎や包皮に充実したニクニクしい、カリフラワー上のしこりが発生します。
時にはピンポン玉大までの大きさになることもあり、外見上陰茎が盛り上がっているとか、包皮の中で出血をしているなどに飼い主様が気づき来院されます。
症状
初期段階では、オス犬自体にはあまり自覚症状が出ことはあまりなく、食欲元気などにも変化はあまりありません。
おもたる症状としては、出血をする、膿のようなものがでるなど、どちらかというとご自宅での管理の問題になることがほとんどです。
ただし、周囲の組織やリンパ節に転移を起こした場合には、何らかの症状が出ることもあります。
治療法
一般的には外科的な切除はあまり行いません。
理由はこの腫瘍は容易に伝播するため、切除しても再発率が高いからです。
その一方で、抗がん剤にはよく反応するため、化学療法を持ちいることがほとんどです。
もちろん抗がん剤自体にも副作用はありますので、安易に勧められる治療ではないのですが、使用する抗がん剤は他のものに比べれば安全性も高く安価なため、それほどの負担にはならないのでは?と個人的には思います。
予防法
繰り返しますが、この腫瘍は伝染病のようにほかの個体に伝播する腫瘍であるので、感染を予防するのが一番の方法です。
特に交尾により伝播するのが一般的なため、去勢を行い、そういった生殖活動を抑えてあげるのが特に有効だと思います。
普段、見えずらい場所だからこそ発見も遅れるので、予防法があるのであれば積極的に考えたほうがいいでしょう。
まとめ
可移植性性器腫瘍は非常に稀な腫瘍だと思いますが、時折この病気にかかった犬が来院することがあります。
抗がん剤の反応はいいとは言いつつも、治療は長期にわたることが多いので、負担は全くないわけではありません。
こういった稀な病気も、去勢手術が予防に役立つので、病気の予防という意味での去勢手術をよく検討してみてはどうでしょうか?