よく去勢手術を行うことのメリットして、病気の予防ということが挙げられます。
個人的な意見では、予防できる病気はオス犬では多いと思いますが、残念ながらオス猫ではあまり予防できる病気はありません。
逆に去勢をすることで病気になるのでは?といった意見もたまに聞かれます。
今回は去勢手術をすると、本当に病気になりやすいのか?という疑問に対し、獣医師としてお答えしたいと思います。
去勢後の体の変化
去勢手術後によくおこる体の変化としては、やはり肥満傾向になりやすいと言われています。
実際に去勢手術後のオス猫の約10~40%猫に肥満傾向が見られていると言われています。
10~40%と言われるとかなりざっくりとした数字になりますが、実際のところどれくらいの猫が肥満傾向になるのか大規模な調査はされてはいません。
また原因に関しても色々な予想はされているものの、はっきりとしたことはわかってはいません。
ただ、肥満傾向になるというのは事実としてあり、去勢後に低カロリー、低脂肪の食事変更することが推奨されています。
また、去勢手術を行うことによって、体がメス化することはよくあり、オス猫特有の匂いや皮膚の厚みはなくなります。
また陰茎が小さくなることも言われており、去勢することによる雄性ホルモンの欠乏によるものだと考えられています。
肥満による疾患
実際に肥満になると様々な疾患が起こるようになります。
糖尿病、腎不全などの発生リスクは肥満猫では高くなることは知られています。
その他の肥満誘発性の病気に関してはよく調べられてはいませんが、おそらく人間と同じような疾患は起こりやすくなるだろうと言われています。
また、運動能力の低下により落下事故が多くなり、腰を損傷することにより痛みや場合によっては不全麻痺を引き起こすこともあります。
泌尿器系・生殖器系の変化による疾患
去勢手術による泌尿器、生殖器系の変化による腎不全や、尿石症の発生率にてついてはわかってはいません。
ただし、経験則にはなりますが、去勢をしたオス猫の陰茎は非常に小さくなることが多いので、一度尿石症などになってしまうと、尿道閉塞を引き起こしやすくなります。
陰茎が小さいので物理的につまりやすいということだけの理由です。
その他のものに関しては、ほぼ未去勢のオス猫と大きくは変わりません。
ホルモン性の疾患
確かに去勢後には雄性ホルモンは非常に低値になると考えられていますが、もともと性ホルモンは個体差が大きくあり、獣医学的に計測することに大きな意義がないと言われています。
ただし一つだけ言えることは、こういった変化が確実にあったとしても、それにより引き起こされる特定の疾患は今のところ発見されていません。
したがって去勢後のホルモン異常に関しては無視してもいいと思います。
腫瘍などの発生率について
去勢手術後に特定の腫瘍に関して発生頻度が上がる可能性があるのでは?と言われることがあります。
猫で起こるメジャーな腫瘍に関して、去勢、未去勢での有意な差が起こるものは今のところっ見つかっていません。
将来的に判明するような疾患が出てくることは否定はできませんが、その可能性はほぼ0だと思います。
まとめ
去勢手術が体に与える影響はもちろん大きいとは思いますが、直接的に引き起こされる疾患については今のところ見つかってはいません。
肥満や尿路結石に併発するような疾患については、食事の管理によって大幅に改善しますので、それほど気にされないほうがいいとは思います。