避妊手術の手術室。麻酔ってどうやってかけているの?

犬の避妊手術をするときに必ず行う麻酔。手術においてはとても重要な部分になりますが、手術室での麻酔の様子についてはわからないことばかりかもしれません。

今回は犬の避妊手術が始まるまでの麻酔の様子についてお話します。

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避妊手術の吸入麻酔

犬の避妊手術は吸入麻酔にて手術を行います。では、吸入麻酔なのでマスクで麻酔を嗅がせて…というようなことは実はしません。

通常、犬の手術の麻酔は気管内挿管という方法をとります。

気管内挿管とは喉から柔らかいチューブを気管内へ入れ、そのチューブから麻酔や酸素を送りこんであげる方法です。

気管内挿管とは

気管内挿管

この麻酔や酸素を送るためのチューブは気管チューブと呼ばれます。

チワワなどの小型犬、フェレットなどのエキゾチックアニマル、50kg以上ある大型犬まで、動物病院には様々な太さや長さのサイズを用意してあります。

吸入麻酔以外にも、呼吸が止まってしまった時の気道確保や人工呼吸などの救急処置でも使われます。

気管内挿管での麻酔は、肺に麻酔や酸素を安定して送ってあげることが出来ますし、麻酔中に気道がふさがって窒息してしまうことを防ぐことができます。また、人工呼吸器につなげることで、呼吸のコントロールを行うことが出来るようになるという利点もあります。

このように、気管内挿管は安全に麻酔を行う上での大事なポイントになります。

麻酔の様子

吸入麻酔では気管チューブを入れられるように、処置の前に鎮静剤や麻酔薬を注射で投与します。

これらの薬は点滴をする時などにも使われる、「留置針」と呼ばれる特殊な針で血管内に投与してあげます。

そして、注射薬が効いてくると、犬はうとうとするようになり、だんだんと意識が無くなってきます。十分に鎮静が得られれば、口を大きく開けても犬は嫌がらなくなってくれます。

ようやく口を開けて喉の奥を確認することが出来るようになります。

喉頭鏡

ただし、単に口を覗いてみても、気管の入り口は見えません。獣医師は喉頭鏡という器具を使って、喉の奥を照らしながら、気管チューブを挿入します。(病院で喉を診る時のオエッとなるような形です)

無事に気管チューブが気管内へ入ったら、すぐに麻酔器に繋げて、しっかり麻酔が効いてくるのを確認してあげます。

麻酔機器

麻酔をかけている間は、心電図や血圧計、パルスオキシメーター(酸素が体に行き渡っているか)など、様々な機器が体の状態をモニターに映し出してくれます。

このように犬の安全を確保しながら、吸入麻酔は行われているのです。

気管内挿管のデメリット

気管内挿管を行って麻酔をかけた後は、気管チューブの刺激により喉に違和感を感じる場合があります。

通常は数日で良くなりますが、お家に帰って来てから、咳をしていたり、声がかれているような場合は一度獣医師に相談をしましょう。

まとめ

麻酔の安全性を高めるために、様々な取り組みがされていますが、残念ながら安全性を100パーセントにはすることは出来ません。

しかし、私たち獣医師はこの数値を限りなく100パーセントに近づけるために、何が出来るのかを常に考えて努力するようにしています。